2017年4月18日に日立製作所と株式会社HIROTSUバイオサイエンスが、線虫によるがん検査の実用化に向けた共同研究開発契約を締結したと発表した。
線虫が、がん患者の尿には近づき、健康な人の尿からは離れるという特性を利用した検査法を開発したHIROTSUバイオサイエンスの技術を用い、自動で解析する「線虫がん検査装置」の開発を日立が担当し、量産を目指す計画だ。
両者は2019年末頃をめどに事業化を目指すとしている。
Photo: undefined by John Twohig
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また線虫は飼育コストが安く、尿一滴で検査が出来るため検査費用の低コストが可能となり数千円で受けられることになるため、実用化されれば日本初の生物診断法が世界へ広がることになる。
検査で使われる線虫は、体長1ミリ程度のヒモ状の動物。
線虫は、犬と同等の優れた嗅覚を持っておりがん組織を好むため、がん患者の尿に引き寄せられ、健常者の尿は避ける特性があることを突き止めた。
この技術は「n-nose(エヌ・ノーズ)」と名づけられ、がん組織が小さい早期がんの発見にも効果が見られるため実現すれば安価で安全ながん検査につながる。
同研究にあたっていた九大大学院理学研究院生物科学部門助教の広津崇亮(たかあき)氏が16年9月、この技術の事業化を目指すベンチャー、HIROTSUバイオサイエンスを立ち上げ、その可能性に着目した日立との共同研究開発契約が締結されることとなった。
HIROTSUバイオサイエンスによると以下のような利点を上げている。
①苦痛がない | 尿サンプルを解析します。必要な尿はわずか1滴です。 |
②簡便 | 尿の採取に食事などの特別な条件は定めておらず、通常の健康診断などで採取した尿を使うことができます。また医療機関に行く必要がないため地域間格差がありません。 |
③早い | 診断結果が出るまで約1時間半。 |
④安価 | 検査システムのコストも安価であり、開発途上国での導入も期待できます。 |
⑤がんスクリーニング | これまでに調べた10種類程度のがんについて全て検出可能。その中には早期発見が難しい膵臓がんも含まれています。 |
⑥早期発見 | ステージ0、1の早期がんでも高感度でした。 |
⑦高感度 | 感度95.8% |
実現間近、がん治療の未来
安価で、手軽に検査が受けられる線虫によるがんの検査の早期実現に期待するところだが、治療法においてもがん細胞だけを殺すため副作用を伴わない「近赤外光線免疫治療」という画期的な治療法が米政府の研究費で実現化に向けて進められている。
両者に共通しているのは
- 費用が安い
- 副作用がない
- 短時間で終わる
「線虫がん検査法」と「近赤外光線免疫治療法」が実現されたら、早期発見、早期治療が可能となり、がんは特別怖い病気ではないと思える日が来るのではないだろうか。
近赤外光線免疫治療については当サイトの以下の記事へ
がん患者待望の画期的な治療法の実現が間近い『近赤外線免疫治療』
リクルート
これを機にHIROTSUバイオサイエンスでは検査員と研究員を募集している。
検査員
仕事内容 | 臨床研究(線虫の行動解析) |
募集人員 | 10名程度 |
応募資格 | 臨床検査技師 看護師 生物学科卒(大学、専門学校) |
研究員
仕事内容 | 線虫によるがん検査の実用化を目指した研究開発 |
募集人員 | 10名程度 |
応募資格 | 博士、もしくは修士の学位を有する者(学位取得予定者も含む) |
がんの医療費は年間3.6兆円(2011年)にも上り、がんによる経 済的損失、社会的損失は莫大です。がんによる死亡を防ぐ最も有効な手段は、早期発見・早期治療です。
海外を含めると非常に大きなマーケットがあり将来有望な事業の可能性を秘めている。
興味のある方は以下のHIROTSUの募集要項を覗いてみてはいかがでしょうか。